ヨガで「中一ギャップ」の壁を取り除く

 

小学校から中学校への学校移行のことを最近では、「中1ギャップ」と呼ぶことがあります。小学校段階ではいじめ、不登校、学力不振といった学校不適応と呼ばれる状況が見受けられなかった子どもが数倍も増えてしまうそんな印象を調査では与えますが、果たしてそうなのでしょうか。

私が送り出した子どもたちとのことを紐解いて考えてみましょう。


サインを見逃さない

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ある生徒は、どうしても苦手なメニューの出る日に決まって欠席する子でした。担任もクラスメイトも欠席理由を知っていて、なんとなくズル休みでは?という雰囲気が流れるものの、担任が「無理して食べる必要ない」と一喝して、目立ったいじめもなく、学校行事もこなしていました。時折、月曜に欠席することはあるものの、連続して欠席することはないため、保護者が心配することはありませんでした。養護教諭より、「偏食のためか体重の増加が見込まれない。摂食障害とまでは言えないが、気になっている」と相談がありました。そのため、遅刻してきた月曜に相談室で会うこととなったのです。聞くと、偏食は小さな頃からの様子。本人の悩みのタネは「お腹が空かない」ということでした。自宅では安心して好きなものを、夜にたくさん食べ過ぎてしまい、夜中にお腹を壊すことが多く、保護者も心配するものの、好きなものしか食べないためにどうしたら良いか、悩んでいました。

私は、質問をいくつかしてみました。「正直言って、学校しんどい?お腹空かないというより痛い時ある?」すると、生徒は、涙目になって沈黙します。どうやら私の質問はあまりにも的を得てしまって、子どもが次に返す言葉を取ってしまったようでした。子どもの緊張を和らげようとしたのに、失敗です。今度は、「嫌いなものを食べて、とは言えないけれど、お腹が緊張しているのかな?」と投げかけてみました。すると、無表情で、「お腹は空かないし、食べたくないのに、給食がある。」とのこと。なんとか牛乳を飲んでやり過ごしているようでしたが、本人に取って、給食はストレスのようでした。「ご飯は人間の体を作るのに必要だからおいしく食べれたら良いと思う。お腹が元気になるために”ヨガ”してみない?」と誘ってみました。

言葉で表現することや表情で表現することが難しいと思われた生徒が、少しずつ少しずつ自分の言葉で身体について語れるようになっていきました
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運動への苦手意識はチェアヨガでアプローチ

体育も大嫌いな生徒、「運動は嫌だなあ」と言います。そこで、座ったままでできるチェアヨガ を提案しました。行ったのは、①風船の呼吸、②ヘリコプター、③下向きのイヌのポーズです。たった3つのヨガでしたが、生徒にとっては、とても疲れてしまうようで、1つ1つの間に休憩を入れて行いました。しかし、この休憩は”自分の体を感じる”という時間になったようで、「なんか変!」という戸惑いから「痛くてできない」という拒否感から、「できるかも!」という自信まで色々な反応が見られました。言葉で表現することや表情で表現することが難しいと思われた生徒が、少しずつ少しずつ自分の言葉で身体について語れるようになっていきました。たまに肩に触れると大変固く緊張から筋肉の強張りも見られました。そのうち、空想の世界のキャラクターになりきって、犬のポーズをしたり、「今日も運動するんだよね」と嫌々ながらもそれなりに楽しむ日も増えてきました。保護者より、「実は夜お腹が痛くて眠れない、という日に一人でヨガをしていました。自分でなんとかしないとと思ったのだろうと、驚いています。」ということを教えてもらいました。「私も犬のポーズが気持ちよくて一緒に行うことにして見ます。」とも。

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下向きのイヌ

下向きのイヌは身体を活性化させるだけではなく、ストレス緩和にもつながります。

インストラクション:

  1. 椅子の後ろに立って、両足を腰幅に開いた山のポーズをとってから始めましょう。

  2. 息を吸って、高くそびえる山のように背すじを伸ばして立ちます。

  3. 息を吐いて、股関節から身体を倒して、両手を背もたれに置きましょ う。

  4. 息を吸って、後ろの壁に向かって腰を押し出しながら、背骨の長さを感じます。

  5. 息を吐いて、頭を両腕の高さにしましょう。

  6. 呼吸を続けます。

  7. 息を吸って、前方の両手を見て、 前に歩いて山のポーズに戻ります。

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腕は頭へ、手は脚へ

「腕は頭へ、手は脚へ」は、背中を強化し、胸部や肩をストレッチします。

インストラクション:

  1. 椅子に座って、両足を床に着け、背 を高く背骨から伸ばした状態で始めま しょう。

  2. 息を吸って、両腕を上げて、

  3. 息を吐いて、右手を左膝の外側 に、左手を頭の後ろに回して右耳のほ うに届かせます。

  4. 吸って、背すじを伸ばしましょ う。

  5. 吐いて、身体をねじって左肩の先 を見ます。

  6. 呼吸を続けましょう。

  7. 準備ができたら、ねじりを解いて、座った状態に戻りましょう。

  8. 反対も同様に繰り返します。

中学入学後、その生徒は仲の良い近所のお友だちと同じクラスになり、4月は楽しく過ごしていました。しかし、5月の連休明けから部活動が本格化してきました。生徒は、週に2日のイラストを書いて楽しむ部活に入り、友だちもできたようだと聞いていました。しかし、5月末にはパッタリと学校へ来なくなってしまったのです。週に数日は登校しているようでしたが、担任以外とは会えずに帰宅するようになってしまったとのこと。中学校の大勢の雰囲気や教室移動の多さも安心して学校に通うことができないのではないか、と中学の養護教諭より連絡を受けました。そして、ヨガの練習をしながら、心に寄り添う相手が継続していくことの大切さを教えてもらったケースでした。(その後、別室登校を続け、この生徒は通信制の高校へ入学しました)

ヨガの役割

 ヨガは呼吸のやり方、ポーズのやり方を単純に伝えるだけではありません。 イメージングも用いていきます。例えば、風船の呼吸。「大きな風船の中にお腹のいやーな気持ちを入れて、膨らませてポーンと外に出してしまおう」そんな風に気持ちと組み合わせていくと、大きなリラクセーションにつながります。先の生徒は、空想の世界にいることで、自分の心を大切にしていました。ですから、まるでそのキャラクターのセリフのようにいうと生徒はとても嬉しそうな顔をしました。それは心と心がつながる感覚のようにも思えました。

 小学校から中学校へ上がると、色々なことを求められるようになります。教室以外の場所で授業を受けることも多くなり、急いで準備をして移動することも、各教科ごとの宿題のデットラインを覚えられなくなったりします。ゆったりとしたペースで過ごすことが好きな子やどちらかというと1人の世界を大切にしたい子にとっては、ハードなのが学校生活なのかもしれません。


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