脳について生徒に教える方法

 

多くの場合、生徒たちは、怒りや恐怖、悲しみといった大きな感情に圧倒されて、このような感情に対してどのように対応していいのか分からないことがあります。

脳についての基本的な知識を持つことで、起きていることを正常化して理解することができます。それはまた、私たちの感情的な経験をより明確に他者に伝え、感情に対してより効果的に反応する力を与えてくれます。

この知識は、生徒にとっても、私たち教育者にとっても大変パワフルです。脳の仕組みを知ることは、生徒をよりよく理解してつながりをもち、そして生徒が助けを必要としているときにサポートすることを可能にさせます。

まずはじめに、脳を見てみましょう。

 
 

辺縁系 = 世界をどう感じるか

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辺縁系は、私たちの脳の中心に位置し、扁桃体として知られる有名な構造を含みます。

その機能は、感情入力を喜び、または脅威として分類することによって、感情反応をを決定することです。脅威として捉えられた場合は、すぐに闘争-逃走-凍結の反応を始めます。

ここで注意すべき重要な点は、扁桃体が実際の脅威と知覚された脅威を区別しないことです。現代の生活では、これは扁桃体がしばしば知覚された脅威から誤警報を引き起こし、潜在的に問題のある行動を引き起こしてしまう可能性があることを意味しています。

例えば、ある生徒が、他の生徒からただ普通にちらっと目を向けられたことを脅威として認識し、怒りの感情、または最終的には闘争反応につながる可能性があるのです。あるいは、生徒はテストを脅威として認識する可能性もあり、これは動揺やイライラした感情、またはテストを受けることを不可能にさせてしまうこともあるのです。

 

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前頭前皮質 = 世界についてどう考えるか

大脳皮質は脳を囲む最も外側の層、すなわち、よく目にするシワの多い層を指します。ここは、私たちが世界についてどう考えて、問題を解決していくかということに責任があります。

大脳皮質は、実行機能を引き起こす前頭前皮質を含みます。実行機能は、目標を達成するためにうまく指揮したり、物事を成し遂げるための助けとして私たちが持つ精神的なスキルと考えることができます。言い換えると、それは自己統制です。前頭前皮質は、バランスのとれた選択や問題解決をし、そして最適に学習することを可能にします。

意識的に感覚入力を処理するための時間と空間を提供すると、私たちは前頭前皮質が扁桃体の無条件反射的反応を調節し、代わりに最適な反応を選択できるようにします。

脳を家として描く 

『しあわせ育児の脳科学 (The Whole Brain Child) 』の中で、ダニエル·J·シーゲル博士と ティナ·ペイン·ブライソンは、脳は二階建ての一軒家として想像できるというコンセプトを紹介しています。

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下階 (または辺縁系) は、感情、反応そして生命維持機能といった重要な基本機能を含んでおり、家に例えると、キッチンやバスルーム、リビングルームといった基本的な生活空間を含む下階に似ています。ここは、闘争 - 逃走 - 凍結が存在する場所です。

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上階 (または前頭前皮質) はより複雑です。 その機能には、思考、問題解決、計画、および統制が含まれ、これらをまとめて、実行機能の中心部となります。 家の中では、オフィススペースやライブラリー (本棚があり本をまとめてある場所)、または寝室といった2階の部分に相当します。

フタが飛ぶ

私たちの脳は、上階と下階の脳が一緒に働くか、または統合されているときに最もよく働きます。家の例えでいうと、上階と下階をつなぐ階段部分がとてもしっかりしていて、人の通りが多いためによく発達していると想像してください。これが統合です。

下階の脳が支配権を握ると、上下階をつなぐ階段がプロックされることで上階へのアクセスが妨げられ、もはや上下階が繋がっていないと想像してください。これは、「フタが飛ぶこと (flipping our lid) 」として知られています。日本語だと「堪忍袋の緒が切れる」に近い意味になります。

私たち皆フタを飛ばすような経験をするでしょう。しかし、子どもは大人に比べてより頻繁にフタを飛ばすような状況になりうるのです。アイスクリームを買うか買わないかで泣きわめく、スーパーで見かけることの多い癇癪を想像してみてください。 

どうしてでしょう?下階の脳は出生時によく発達していますが、上階の脳は、人が20代半ばになるまで建設中なのです。そのため、落ち着いて物事をまとめることが神経学的に不可能なことがあるため、私たちが生徒に期待することをきちんと意識しなければなりません。

したがって、脳の統合をを理解し、強化するための十分な機会を提供することは、建設が行われている重要な年の間、生徒の脳の発達をサポートします。

アクティビティ: 脳を擬人化する

生徒が理解しやすいように、家の上下階にそれぞれ住んでいる住人をキャラクターで擬人化してみましょう。まずは上階と下階の脳についてのコンセプトを生徒に説明します。それから、その家に住んでいる人のブレインストーミングを始めましょう (幼少の生徒には、自分で名前を考えされるといいかもしれません)。

下階のキャラクターは、私たちの安全と生存に焦点を当てている触手です。これらの性格は、危険を識別し、感情を刺激し、そして素早く反応することです。

アイデア: 不安なアンディ, 怒りのエイミー

上階のキャラクターは、思想家であり、問題解決者です。彼らは、私たちの感情を統制し、反応を計画するのを助けます。

アイデア: 問題解決ペネロペ, 落ち着きカルロス

上階と下階の階段がつながっているとき、キャラクターは、それぞれのメッセージを持って上下階を自由に行き来することができます。

この様子を生徒とブレインストーミングしましょう (例: 友達と遊んでいる時, 問題が発生した時に問題解決したり, 困難な状況で落ち着いたり, 良い選択をした時など)。

時には、下階の脳が危険を察知しフタを飛ばすことがあるでしょう。キャラクターは家の上階を遮るため、脅威が最小限になるまで階段がつながることはありません。これは私たちの闘争 - 逃走 - 凍結の反応のように見えます。

このような反応が最も安全な状況を生徒に聞いてみてください。幼少の生徒へは、怖らがないようにありそもない状況から始めてみるとよいでしょう。

私たち皆フタを飛ばす経験があることを生徒に説明します。そして、あなた自身が最近フタを飛ばした経験例 (内容が軽く気楽なものだといいかもしれません) を共有しましょう。

このアクティビティを行うことで、生徒と協力して彼らの感情を理解し、より自由に感情を伝えられるための共有言語を確立します。それはまた、私たちの感情的な反応についてのパーソナライゼーションや (個人的な見解からの) 判断を取り除き、感情について実用的に会話するための方法を学ぶことを可能にします。

アクティビティ: 家を描く

生徒に、家と、その家に住むキャラクターを描いてもらいましょう。上下階がきちんとつながっているとどのようになるか描きます。また、フタが飛ぶような経験をしているときはどのような状況になるのかを描きます。

マインドフルネスと脳

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マインドフルネスは、私たちに気持ちを落ち着かせるためのツールを与えてくれます。つまり、辺縁系 (下階の脳) を落ち着かせ、前頭前皮質 (上階の脳) を活性化させます。身体が落ち着いていると、心も落ち着きます。そのような状態にあるときは、バランスのとれた選択をより簡単に選ぶことができるのです。

マインドフルであるということは、分析や修正を試みることなく、気づきや注意力を今この瞬間に引き寄せ、思考や感情、そして身体の感覚を観察することを意味します。これには静かな状況と好奇心が必要になります。そうすることで、将来への不安や、過去の後悔に心をもっていかれることなく、内外の環境で今何が起こっているのかということに気づくことができます。

エビデンスによると、瞑想や意識的な呼吸、そしてヨガなどのマインドフルネスアクティビティが前頭前皮質を活性化し強化することで、注意力や感情を統制し、より良い選択をすることができることが示されています。マインドフルネスを実践すればするほど、この能力は強化されます。

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マインド (心) とボディ (身体) のつながり

ヨガは、心と身体のつながりを引き込むことで、マインドフルネスを実践へとつなげていきます。呼吸法やヨガポーズ、そしてリラクゼーションエクササイズは、身体を使って意識的に落ち着かせる方法を生徒に教えます。 

この雰囲気を感じ取るために、例えばあなたが恐れや不安を感じたらどのように呼吸しますか?おそらく胸に素早く浅く息を吸い込みます。その逆もまた真実です。つまり、素早く浅く息を吸うと、脳内のストレスや不安感を引き起こす可能性もあります。

その一方で、お腹に意識的に深い呼吸をすると、落ち着いてリラックスするためのメッセージが脳へ送られます。ぜひ試してみてください。

ヨガのテクニックは、身体と心を積極的に落ち着かせる方法を提供することで、積極的にリラクゼーション反応を引き起こし、下階の脳の素早い反応を妨げます。擬人化したキャラクターを例にあげると、ヨガは下階の脳の触手が落ち着くのを助け、上階の脳の問題解決者の声が再び聞こえるようにサポートします。

 

ここで、3つのヨガテクニックを紹介しましょう。 

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海の呼吸

なぜ効果的なのか:

ストレスや不安は、顎や肩、そして腰に溜まります。大きく口を開けて音を出しながら息を吐くことによって、意識的に身体に蓄積したストレスや不安からの緊張を手放します。

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机に伏した姿勢

なぜ効果的なのか:

前屈は、血流を逆流させることによって身体を落ち着かせます。それは、生徒が少し時間をかけて、態度やふるまいを尋ねるように焦点を内側に向け、なりたい自分に、なりたい状態にシフトする選択をすることを可能にさせます。

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山のポーズ

なぜ効果的なのか:

このポーズは活気づけます。どっしりと立ち、数回深呼吸することで、心と身体が目覚めます。