カウンセリング x ヨガツール

 

小中高等学校のスクールカウンセラーとして活動している太田千瑞さんがカウンセリングにヨガツールを取り入れている理由とは。

日々多くの生徒たちと向き合い、それぞれの生徒が抱えている相談事に耳を傾けていくのが太田さんの日課です。相談事の内容はさまざま。同じ内容の相談事でも対応方法はさまざま。その中でも唯一共通して行っていること、それはヨガのツールを提供することです。多く寄せられる相談事の中でも今回はいじめについて焦点を当ててみました。

スクールカウンセラーとしての悩み

スクールカウンセラーとして、「いじめの悩み」を聞くことはとても多いです。理由は様々ですし、「解決すること」は至難の技です。それは2つの理由があります。1つ目には、いじめの概念の曖昧さが挙げられます。つまり、いじめられたその子がどのような心の世界で生きていて、どんな風に事実を捉えているのか、によって、心の傷の大きさが変わってくるからです。私たち大人が推し量っても全てを感じ取るわけには生きません。そして、1度作られた心の傷はなかなか消し去れるものでもないのです。2つ目には、カウンセラーが2つの立場を平等に理解することが難しいことが挙げられます。なぜなら、カウンセラーがいじめた子もいじめられた子もどちらもカウンセリングすることがあるからです。

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カウンセリング

それではあるケースを見てみましょう。AさんはBさんの言葉に傷つき、学校の相談室へやってきました。Aさんの気持ちを聞いていき、なんてことをBさんは言うのだろう?とAさんの気持ちに共感し、学校の先生たち全員味方であること、学校を安全な場所にすることを約束し、辛かった気持ちを和らげていきます。しかし、AさんはBさんが怖い気持ちから学校を休んでしまうようになってしまいました。

その間、Bさんのカウンセリングが始まります。よくよく聞いてみると、実はAさんがBさんのお兄さんのことをバカにしたから、言い争いが数回続いたそうです。その後、それでも気持ちが収まらず、つい上履きや筆箱を隠したり、通学路の途中にランドセルを投げ捨てたのだそうです。Bさんはあやまる勇気がないと言いました。そこで、言葉ではなく、体の変化からアプローチすると素直になれるのかもしれないと思い、スクールカウンセラーの私は、ヨガの戦士のポーズと、ヨガアクティビティ“を提案し、数回、試みました。強い戦士のような心になって、呼吸をしていくと、自分が安定していくのをBさんは感じたそうです。クラスメイトに「お前のせいでAが学校休んでるぞ」と言われ、実は心の元気が無くなっていたのです。また、ものすごく両親に叱られ、家にも帰りたくない気もちがたくさんあるとのことでした。そのため、Yoga.edのプログラム、「洗い流そう」と用いて、「洗濯ゴシゴシ」と言うように体を洗う真似をスクールカウンセラーとしました。すると、真剣な表情で「謝るしかないよな」とつぶやく彼がいました。

Aさんが別の日、放課後の時間帯に来校してきました。スクールカウンセラーと話す必要がある、と校長先生から連れてこられてきました。わたしは、まずは、Aさんに対して、Bさんから聞いた話を伝えることよりも前に、どうして欲しいかと考えを聞きました。すると、「教室が怖い」と言うのです。そこで、数日は相談室や保健室で過ごすことになりました。その間、気持ち落ち着けられる上、自分の頭や手を握ることで、自分を撫でていく効果もあるように思ったため、必ずイルカの呼吸やラッコの呼吸をしてもらい、呼吸しながら、「大丈夫、大丈夫」とつぶやくよう伝えました。そのうち、「実は・・」とBさんと話したいと言います。担任の先生を交えて3人で色々意見交換をしました。色々な誤解が少しずつとけていったようです。その後、AさんとBさんが楽しく休み時間にドッチボールをしているのを見かけました。

カウンセリング x ヨガツール

Aさん、Bさんの相談を受けている間、スクールカウンセラーである私は、疲弊していました。多くの先生方の考え方がBくんを完全に悪者にしていて、どう先生方と会話したらよいかわからない気持ちが増えていたからです。そんな時に、Bさんとともに、ヨガの呼吸とポーズをすることで、自分が落ち着いて先生方と話せることに気づきました。そして、子どもたちにカウンセリングだけではなく、呼吸やポーズを伝えることで、自分がカウンセリングをしない間も勇気づけることができると確信しました。

つまり、自分で自分の中に隠れている”勇気”をヨガの呼吸法で見つけ、それがあることでいじめを早期に解決できると私は考えました。また、呼吸法を知っていると、何か心の中にモヤモヤしたときに、自分で心のお掃除ができると思いました。大人が教えるのではなく、子どもたちがすでに持っている”勇気”を増やしていくのです。