アンガーマネンジメント - 「感情理解教育」とは

 
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「アンガーマネジメントとは、1970年代にアメリカで生まれたとされている怒りの感情と上手に付き合うための心理教育、心理トレーニングです。怒らないことを目的とするのではなく、怒る必要のあることは上手に怒れ、怒る必要のないことは怒らなくて済むようになることを目標としています。当初は犯罪者のための矯正プログラムなどとして活用されていましたが、時代の変遷とともに一般化されていきました。」(一般社団法人日本アンガーマネジメント協会, 2018)

文部科学省ではこのアンガーマネジメントを「感情理解教育 (アンガーマネジメント)」と下記のように定めています。

「自分の中に生じた怒りの対処法を段階的に学ぶ方法である。「きれる」行動に対して「きれる前の身体感覚に焦点を当てる」「身体感覚を外在化しコントロールの対象とする」「感情のコントロールについて会話する」などの段階を踏んで怒りなどの否定的感情をコントロール可能な形に変える。」(暴力行為のない学校づくり研究会, 2011)

学校で見られる怒りの感情

皆さんは、「小1プロブレム」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
小学校1年生のクラスが荒れてしまい、学校生活がうまく立ち行かなくなることを指します。具体的には、学校のルールを示しても、守ることができない、授業中に立ち歩く、感情のコントロールが難しい子どもがみられる、などです。この状況が起きる背景は多様ですが、その理由とされているのが、幼児期の教育と小学校以降の教育内容にギャップがあること、そして、感情のコントロールが育ち切っていない子どもが散見されることです。幼稚園・保育園との連携は充実し始めており、学校生活を体験できるような就学前プログラムを取り入れている園も増えてきています。

とくに、学校行事の多い2学期、身体が疲れている時に子どもたちは、イライラしやすく、ケンカや暴力も増えています。学校行事の前や終わった後の疲れのピーク時に心と体の疲れをとるツールは絶対的に必要だと考えられます。

なぜ起こるのか – 感情に関する研究

それでは研究をみてみましょう。大河原(2004)は、「子どもが感じる感情には、 身体の中で感じる身体的感情と頭の中で感じる認知的感情の2つが存在している、」と指摘しています。

「また、人間の脳本体は中心部から外側に向けて脳幹部と辺縁系、皮質からなる三層の構造をなしていると言われており、危険な状況にある時、辺縁系の扁桃体から生体防御反応が生じ、皮質にサインが送られる(ボトムアップ)。そのサインに対する適切な行動を、皮質の前頭前野が辺縁系に指示を出す(トップダウン)。皮質の前頭前野は、その危険な状況が、妥当なものかどうかを判断する役割を担っている。」

「このボトムアップとトップダウンの情報のやりとりが、バランスよく行われることで、身体への安心感を引き出すことができると考えられている。つまり、身体で感じているネガティブな感情が、大人に承認された後、適切に言語化されることによって安心するというメカニズムになっている、とも指摘されている」(大河原, 2014, 大喜多, 2017)。

教育と関連する脳の発達や働きを理解することは、子どもの学習体験を最大限にひき出してあげることができます。Yoga Ed.のカリキュラムは、脳の構造から働き、そして発達をヨガというツールを用いてサポートしていきます。

怒りの感情 – 身体的 vs 言葉

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子どもは、身体的な変化・精神的な変化がまだアンバランスです。特に小学低学年の暴力行為の増加、思春期の感情のコントロールは、対応方法に苦慮している学校現場が多いです。例えば、物が散乱する、教材を投げる、窓が割れる、椅子を投げ飛ばして怪我をする。これが小学校で起きています。止めようと思っても大人が近づけば近づくほどキレてしまう子どもたちも多いのです。怒りの感情は対応を間違えるとあまり好ましくない結果につながる傾向があります。上記に挙げられた例を含め、物にあたる、身体的に傷つけてしまう暴力行為や、そして暴言など言葉や態度で傷つけてしまう精神的な暴力。もしくは自分の怒りに誰かを巻き込んでしまうこともあるかもしれません。このように、怒りというのは身体的、精神的・感情的の大きく分けて2つのタイプで見られることが多いでしょう。

怒ることは誰にでもできる。ただ怒るのは簡単なことである…しかし適切な相手に、適切な程度に、適切な場合に、適切な目的で、適切な形で怒ることは容易ではない。
— アリストテレス

ヨガでふたつの大きな感情にアプローチ 

怒りの感情は誰もが感じるいたって健康な感情の一つです。その怒りの感情に対してどのように対応していくのか、そこが重要なのです。その方法は様々でしょう。散歩に出かけたり、外の空気を吸いに行ったり。ヨガツールもまたその方法のひとつになります。ヨガツールのもつ素晴らしさ、それは上記に挙げられた身体的な変化と精神的な変化を同時にサポートができることです。

身体的

防衛的に過度に反応している体をコントロールする力を育てていきます。ヨガのポーズは右左、上下、と体をバランスよく鍛えていきます。例えば、どのくらい自分の手が伸びているのか、どのくらいの力で腕を回しているのか?自分の動きにフォーカスさせる言葉かけの中で呼吸に合わせて動くと、子どもたちは、普段何気なく動かしていた手や腕に気づくことができるのです。そうすることで結果外側に向けられていた力を自然とコントロールできるスキルが身につき、暴力行為の低下に繋がることが考えられます。

精神的

体の動きを意識化すること、呼吸に合わせて動くことで、外側に向けられていた意識が内側に向いていきます。何度か繰り返すことで、それができるようになっていきます。すると、自分の内側の変化にも集中することができます。実際、集中力が高まったと言う研究もあります(Peck et al. 2005) 。そうすることで、今私は怒っているんだという気持ちに気づくことができ、ではこんな時はどうしたら良いのだろうときっと自分に合った対応方法を模索することができるようになるでしょう。

怒りの気持ちを操縦するのはあなた自身です。無理をせず、まずは自分自身に優しくすることも大切なのかもしれませんね。ヨガには身体的な自己概念を効果的に促進する可能性が示唆されています(Richter S, Tietjens M, Ziereis S, Querfurth S, Jansen P. ,2016)。そのため、ヨガをすることによって、自分の体の感覚がどうなっているのか、と言うことについても、学ぶことができるのです。

限られた時間やスペースで簡単にできるチェアヨガのツール、またはじっくり時間をかけて行うマットヨガのツール。あなたはどのツールを利用してこれから怒りの感情とうまくに付き合っていきますか?

参考文献

 
會田理沙・大河原美以 (2014) 「児童虐待の背景にある被害的認知と世代間連鎖 : 実母か
らの負情動・身体感覚否定経験が子育て困難に及ぼす影響」, 東京学芸大学紀要. 総合教育科学系, 65(1): 87-96, 東京学芸大学学術情報委員会.

一般社団法人 日本アンガーマネジメント協会, 「はじめての方へ,アンガーマネジメントとは?」, <https://www.angermanagement.co.jp/about> (参照2018-12-18日).

暴力行為のない学校づくり研究会, (2011)「暴力行為のない学校づくりについて(報告書)」,  <http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/079/houkou/1310369.htm> (参照2018-12-18).

Richter S, Tietjens M, Ziereis S, Querfurth S, Jansen P. (2016). Yoga Training in Junior Primary School-Aged Children Has an Impact on Physical Self-Perceptions and Problem-Related Behavior. US National Library of Medicine National Institutes of Health. Retrived December 18, 2018, from https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26941676 (訳は引用者による)