寄せられる相談事の現状

まさか!発達障害の傾向があるお子さんへの効果をスクールカウンセラーの私も半信半疑でした。「障害でもあるのでしょうか?」担任から勧められ、相談室へ来室した母親。スクールカウンセラーである私に、「先生、うちの子、障害ありますか?診断名を教えて欲しいです」と。実は、この母の子どもは、4週連続でトラブルを起こしていました。1回目は、給食準備中に。2回目は休み時間ドッチボールの後に。相手の子は、蹴ったりぶったりして (蹴られたり打たれたりして?)、保健室での手当が必要でした。3回目は、隣の席の女の子。勢いに任せて突き飛ばし、手首を怪我させてしまいました。そして、4回目。担任のお腹をグーで殴りました。

「元々、ケンカっ早く、私の性格も見た目どおり、ヤンキーなんで」と金髪にピアスを付けた母は、涙ながらに言います。「…けど、ちゃんと育てたくって。私も親に殴られていたし」そう、この悩んでいる母自身も、悩める子どもだったのです。

よく話を聞いていくと、母は、子どもにもう暴力をして欲しくないと思い一方で、その思いが子どもへの暴言・暴力に繋がっているようでした。キッチンドリンカーでもあり、叩くのは、頭はダメ、お尻なら・・と彼女なりの自制心はあるものの、暴力は子どものためである、止められないと言います。また、子どもが犯したことへの謝罪に明け暮れ、ストレスがたまり、子どもを寝かせつけた後に、夜中のみに出歩く事が増えていました。

ツールの提供

そこで、親子でできる方法として、いくつか遊びを提案しました。はじめは、ゲームを一緒に行う、動画サイトを一緒にみる、ということから取り組みました。そのうち、ゲームのキャラクターの真似っこを動作でする子どもの活発なところを生かそうと、ヨガのポーズを親子で一緒に行います。「今度は猫!今度は犬!」と子どもが好きなポーズを選び、母が真似をします。
 
その報告を聞いた後、さらに親子でペアポーズを行なうことをスクールカウンセラーである私は、提案します。親子で力加減を見つけることを練習することはとても大切だと考えたからです。ヨガのペアポーズは、相手とのタイミングを合わせること、相手との力加減がちょうど同じくらいであればあるほど、気持ち良さを味わう事ができます。そのため、ダブルボートのポーズと、シーソーのポーズを選択し、やり方を伝えました。また、この時には子どもが好きな音楽をかけたり、歌うことでリズムを取ったりしてもらえるようにしました。母には、“痛い、強い、やめて”という否定的な言葉ではなく、“せーの、上手”というポジティブな言葉を伝えるようにしてもらいました。これは、特別な支援を要するお子さんたちによく用いる「ポジティブな行動支援」のあり方をヒントして考えました。そして、親子で一緒にヨガに取り組む事が習慣になった頃に、ウサギの呼吸を教えました。目をつぶってゆっくり、というのは、この親子に向かないと感じ、早いペースの数行きの後にため息をつくように説明して、取り組んでもらいました。
 そのうちに、呼吸をまるでゲームのように楽しむ子どもと母がいました。これをきっかけに母は、自分が叩かれていた時に、自分の気持ちを誰にも話せなかったことに気づきます。「きっと、この子も感情を言葉にできないのだ…」と納得するようになります。

相談室から学級

一方、学校の担任の先生は、毎朝のホームルームで、ウサギの呼吸を行うことに取り組みました。授業の内容に飽きてしまった時のアイスブレイクとしても何度か行ってみました。すると、これまで問題をよく起こす子であった子がみんなの前で「それ、俺、知ってる!できるよ!」と優しく隣の子に説明しているのでした。

スクールカウンセラーである私は、母に「もしかしたら発達障害?と思ってしまうような攻撃的な行動があったと思う。けれど、いまは、お母さんもお友だちも大切にできるお子さんだと思います」とお伝えしました。

このように、攻撃的な行動が目立つ子どもに対しても、自宅でできる呼吸やポーズを通じて、ヨガが貢献できることがあると考えています。家に帰ってもイライラばかりしていたら、十分な休息も取れないでしょう。しっかりと家庭では、リラックスする空間があり、眠ること・食べることができて、子どもの心と体が成長することは当たり前のことです。その手助けをヨガでも行うことができるのです。